2024.03.21
研究開発

小野薬品、米国の再発又は難治性のPCNSL患者を対象にしたチラブルチニブのPROSPECT試験の最初の投与群における患者登録を完了

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)は、希少疾患で悪性度の高いリンパ腫であり、米国では承認された治療法はありません 1

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下「当社」)は、本日、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であるベレキシブル(一般名:チラブルチニブ塩酸塩、開発コード:ONO-4059)について、米国の再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)患者を対象にチラブルチニブ(ONO-4059)の安全性と有効性を評価する第2相臨床試験(PROSPECT試験)の最初の投与群(Part A)において、登録目標患者数に達し、患者登録を完了しましたので、お知らせします。

 当社の常務執行役員/開発本部長である出光 清昭は、次のように述べています。「PCNSLと診断された患者さんは不安を感じており、米国でPCNSLに対する治療選択肢が必要とされています。米国での第2相臨床試験のPart Aへの患者登録完了は、米国の再発又は難治性のPCNSL患者さんに新たな治療選択肢を提供するための重要な一歩です。本臨床試験にご参加いただいた皆様に心から感謝しています。」

 PROSPECT試験の最初の投与群(Part A)では、高用量メトトレキサートを含むレジメンでの治療歴を有する再発又は難治性のPCNSL患者を対象にチラブルチニブの安全性と有効性を評価します。今回、Part Aの患者登録は終了しました。当社は、引き続き、新たに診断された治療歴を有しないPCNSL患者のファーストライン治療としてチラブルチニブと高用量メトトレキサートを含むレジメン2種類のうちどちらか1つとの併用療法を評価する2番目の投与群(Part B)での患者登録を行っています。PROSPECT試験の詳細に関しては、theprospectstudy.com および clinicaltrials.gov/study/NCT04947319 をご覧ください。

 PCNSLは、希少疾患で悪性度の高い節外性非ホジキンリンパ腫であり、生存率が低いです 1。PCNSLは脳、その保護膜、脊髄、眼球に影響を及ぼしますが、診断時に全身性の病変はありません 1。米国におけるPCNSLの発生率は年間100万人当たり約5人であり、65歳以上に好発します 2

 チラブルチニブは、当社が創製した選択性の高い経口BTK阻害剤です。2023年3月に米国食品医薬品局(FDA)より、PCNSLの治療薬としてオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けています 3。チラブルチニブは、日本、韓国および台湾で「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の効能又は効果で承認されています。

 ONO PHARMA USAの社長兼CEOである伊藤 邦彦は次のように述べています。「小野薬品にとって、今回の患者登録の完了は米国での臨床試験プログラムの構築において重要なマイルストンです。小野薬品は、数十年にわたりがん治療の革新に取り組んできました。この取り組みは、世界中の患者さんの治療パラダイムを変革してきました。さらに、米国でのPCNSLに対するチラブルチニブの研究開発を推進することで、そのレガシーを継続していきます。」

PROSPECT試験について

 PROSPECT試験は、新たに診断された、または再発又は難治性の原発性中枢神経系リンパ腫(PCNSL)に対して、経口剤チラブルチニブの安全性と有効性を評価する第2相臨床試験(NCT04947319)です。再発又は難治性のPCNSLは治療に反応しない(難治性)、または限られた期間しか改善しない(再発)タイプのがんです。再発又は難治性のPCNSLに対する現在の治療選択肢は限られており、PCNSLの治療薬として米国で承認されている薬剤はありません。「PROSPECT」試験の詳細についてはこちら www.theprospectstudy.com をご覧ください。

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)について

 PCNSLは、脳実質、脊髄、眼球、レプト髄膜に限局し、全身に病変を認めない希少疾患で悪性度の高い節外性非ホジキンリンパ腫(NHL)です。米国でのPCNSLの年間発生率は100万人当たり約5人です。その発生率は65歳以上の免疫不全の人でさらに増加します。PCNSL患者が呈する徴候および症状は病変の神経解剖学的部位により異なり、局所神経障害、神経精神症状、頭蓋内圧上昇に関連する症状、発作、眼症状、頭痛、運動困難、脳ニューロパチー、神経根障害などがあります。米国ではPCNSLに対して承認された治療薬はなく、治療アプローチを支持するデータも非常に限られています。最近、導入治療後に新たにPCNSLと診断された患者の臨床結果は改善していますが、約20〜30%の患者で初回治療が奏効せず、最終的には60%の患者が再発に至ります。再発又は難治性のPCNSLについての詳細は、navigatingpcnsl.com を参照ください。

ベレキシブルについて

 ベレキシブルは、当社が創製した選択性の高い経口BTK阻害剤であり、B細胞受容体(以下、BCR)シグナル伝達は、B細胞系リンパ球細胞の生存、活性化、増殖、成熟および分化に関する中心的役割を担っております。遺伝子発現プロファイリングのデータより、慢性リンパ性白血病(CLL)ではBCRシグナル伝達経路が恒常的に活性化していることが示されています。
 日本において、当社は2020年3月に「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の効能又は効果でベレキシブルの製造販売承認を受け、2020年5月に本剤を発売しました。その後、2020年8月に日本で「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」の効能又は効果の追加承認を取得しました。

参考文献:

  1. Schaff LR, Grommes C. Primary central nervous system lymphoma. Blood. 2022;140(9):971-979. doi:10.1182/blood.2020008377
  2. Ostrom QT, Price M, Neff C, et al. CBTRUS Statistical Report: Primary Brain and Other Central Nervous System Tumors Diagnosed in the United States in 2015-2019. Neuro Oncol. 2022;24(Suppl 5): v1-v95.
  3. Tirabrutinib Receives Orphan Drug Designation From FDA. ONO Pharma USA, Inc. Accessed February 1, 2024. https://us.ono-pharma.com/news/tirabrutinib-receives-orphan-drug-designation