CEOメッセージ

Question 01
持続的な成長に向けてどのように取り組んでいますか?

経営戦略をマテリアリティに組み込み、 全社を挙げて価値創造に向けた取り組みを加速しています。

当社は2017 年度に、15 年後の2031 年度をゴールとする長期ビジョンを策定しました。目指すのは、国内製薬大手と同程度の年間2,000 億円を研究開発に投資し、革新的な新薬を世界中に提供し続ける「グローバルスペシャリティファーマ」です。その実現に向けて、15 年間を三つにわけ、各5 年の中期経営計画を立てました。2022 年度からは、第2 期の中期経営計画がスタートしました。
ビジョンの達成に向けて、この第2 期が非常に重要な期間となると考えています。そこで、2022 年に成長戦略を再設定 (詳細はP25~26 参照)するとともに、同戦略の4つの柱と、それを支えるDXや人財などの経営基盤の強化に取り組んでいます。また経営の重要課題をマテリアリティ(詳細はP27~ 31 参照)として組み込みました。
これによって当社のマテリアリティは従来の「CSR の重要課題」から「経営の重要課題」、つまり財務と非財務を包括 した、中長期で取り組むべき課題を網羅したものとなりました。これらのマテリアリティに基づいて成長戦略および、価値創造に向けた幅広い施策を推進し、持続的な成長を確実なものとしていきます。

Question 02
2022年度の業績と中期経営計画についての進捗を教えてください。

売上収益・営業利益ともに 過去最高を更新しており、 確かな手応えを感じています。

2022 年度の売上収益は、前年度比23.8%増となる4,472 億円、営業利益は前年度比37.6%増となる1,420億円となり、どちらも過去最高を更新しました。研究開発費は953 億円となり、2031 年度の目標として掲げる「2,000 億円」の半分近くにまで到達したことになります。
2023 年度の研究開発費は1,090 億円を予定しています。
15 年間のうち7 年目という中間点を前に、目標の半分となる1,000 億円を超えることとなりました。もちろん、研究開発費を捻出するには、相応の原資を確保することが前提です。その点でも、2023 年度には売上収益は前年度比6.2%増の4,750 億円、当期利益は前年度比2.0% 増の1,150 億円を予想しており、ともに2016 年度と比べるとほぼ倍増となっています。
これらの状況を踏まえ、わたしとしては7 年間の途中経過については大いに手応えを感じています。しかし、楽観することなく、成長に向けた施策を一つひとつ確実にやり遂げていきます。

研究開発投資

Question 03
マテリアリティの「価値創造」に含まれる成長戦略について教えてください。

オプジーボの価値最大化によって収益を確保しつつ、新たな革新的医薬品の創製と欧米自販を推進していきます。

オプジーボの「製品価値最大化」を進めてきたことで、日本・韓国・台湾でのオプジーボの売上とロイヤルティ収入は合わせて3,000 億円程度まで拡大しました。今後も適応がん腫の拡大や治療ラインの拡大、併用療法の拡大などを通じて、オプジーボの価値最大化を推進していきます。また、他製品の価値についても最大限に引き上げていきたいと考えています。 一方で、当社グループ全体の売上収益の60%程度を占めるまでになったオプジーボの特許切れに備え、「革新的医薬品の創製」と「パイプライン拡充」、そして「欧米自販の実現」に取り組んでいます。2022 年度には110 件の研究提携を新たに開始し、現状では300 件以上を進めています。そのうち半数近くは海外となっています。米国の医薬品市場の規模は日本の5倍以上、欧州は3倍以上といわれています。日本市場から欧米へと市場を広げることで、単純計算では10倍近い収益が得られることになります。そのため、グループを挙げて「欧米自販の実現」に挑戦しています。米国でのONO‐4059(ベレキシブル錠)の開発をはじめとする複数のプロジェクトを推進するとともに、自販体制の構築を進めています。オプジーボの特許切れによる収益減をカバーし、さらなる成長を実現していくためには、三つ以上の革新的な医薬品を創製し、グローバルで自販していく必要があります。その候補となる医薬品は、現状グローバルで開発している10品目であり、2031 年度までには2、3品目は、世に送り出したいと考えていますし、導入活動も積極的に進めていきたいと考えています。
また、「事業ドメインの拡大」にも注力しています。アンメットメディカルニーズが残された分野はどんどん狭まっており、創薬の成功確率は低下するなかで、長期的な成長には医療用医薬品にとどまらず、新たな事業にも挑戦していく必要があります。昨今では、健康寿命の延伸という社会課題があり、当社では医薬品の研究開発や営業、生産などを通じて長年にわたって蓄積してきた資産やノウハウを活かせるヘルスケア領域にリソースを投入しています。こうした取り組みの一環として、当社の長年にわたる脂質の研究を活かした睡眠サプリ「レムウェル」を2021 年度に発売しました。今後も研究資産を活かした展開を拡大していきます。また、2022年3月には、医療用医薬品以外のヘルスケア事業に取り組むベンチャー企業への投資を行う、小野デジタルヘルス投資合同会社を設立しました。さらに、ヘルスケア分野の情報処理・情報提供サービスを手掛ける子会社として、株式会社michiteku(ミチテク)を設立し、がん患者さん向けに、治療生活サポートツールの提供を開始しています。今後も、こうした挑戦を続け、新たな事業開発を進めていきます。

マテリアリティ

Question 04
「価値創造のための基盤」には、DX人財の育成や人的資本の拡充など成長戦略を支える重要なテーマが含まれていますがその取り組みの詳細を教えてください。

基幹システムの刷新をはじめとして、あらゆる観点から、デジタル・ITによる企業変革に取り組んでいます。

基幹システムの刷新をはじめとして、あらゆる観点から、デジタル・ITによる企業変革に取り組んでいます。
今後、製薬企業として競争力を高めていくためには、「デジタル・ITによる企業変革」が欠かせません。そのために、「基幹システムの構築・整備」「すべてのプロセスでのデジタル活用」「ビッグデータの活用」の三つの施策を進めています。
一つ目の基幹システムについては、業務のグローバル化をさらに推し進めるために、海外の拠点や子会社も含むグループ全体の基盤として構築を進めています。これまでは各エリアでシステムを必要に応じて構築してきたこともあって、グループ一体での運用が必ずしもできていませんでしたが、これを機に統合し、グループでの価値創造の基盤としての活用に向け、取り組んでいます。真のグローバル企業にふさわしい基盤を、今のタイミングでしっかりと構築していくことが重要だと考えています。
二つ目のデジタル活用については、業務の効率と生産性、双方の向上を目的として、研究開発から生産・営業まですべてのプロセスで、それぞれの部門が主導し、デジタル・IT 戦略推進本部がサポートする形で進めています。成長に直結する重要な施策として、例えば営業部門ではAIを活用した営業活動をサポートするシステムなどがすでに具体化しており、成果が出はじめています。
三つ目のビッグデータの活用も長期的な成長に欠かせません。例えば、研究開発の臨床試験では、実薬群とプラセボ(偽薬)群と、二つのグループに分けて行うのが一般的で、100 億円を超えるコストがかかるものもあります。仮に、プラセボ群を通常診療のデータで代用できれば、実薬群だけを試験すればよくなり、コストも大幅に削減できます。これはわたしたち製薬業界にとって大いなる希望ですが、まだ課題も残されており、一足飛びに進むものではないと考えています。まずは研究や開発、営業、生産、MAなどのそれぞれのフェーズで、多種多様なデータを分析することで生産性向上につなげられないか検討を進めているところです。

チャレンジ、イノベーション、多様性を重視した環境整備によって人的資本の拡充を進めています。

日本社会において、労働人口の減少は極めて大きな社会課題となっており、次代を担う「人的資本の拡充」は企業存続のカギと言っても過言ではありません。多くの人が「小野薬品で働きたい」と思う会社にしていけるよう、社員皆が新しいことに意欲的に挑戦し、生き生きと働ける環境づくりに取り組んでいます。
特に力を入れているのが、部門の垣根を超えた挑戦の推進です。各部署から求人を募り、応募者とのマッチングで異動を実現する公募制度を拡充したほか、現在の部署に籍を置きながら、別の部署での業務ができる「社内チャレンジジョブ制度」を2022 年度から営業部門の社員を対象に試行しています。さらにベンチャー企業など社外の組織で経験を積むことも可能にするなど、多様な交流を促進し、さらなる成長ステップへとつなげています。イノベーション人財の育成を目的とした社内ビジネスコンテストも実施しており、2021 年度には83 名がエントリーし、最終的には3テーマが採択され、事業化に向けた活動が進んでいます。2022 年度も85 名がエントリーするなど、イノベーションに向けた社内の機運は高まっています。
また、管理職層への女性登用など、多様性の拡大を進めています。2017 年度に創業300 周年を迎え、またオプジーボを上市したことで、事業フィールドが大きく広がったことにより、社内の多様性を高めていくことは喫緊の課題となりました。女性管理職比率については2022 年度の4.1%から2026 年度までに10%、2031 年度までに20%まで引き上げることを目標として取り組みを開始しています。また30歳前後の若手の社員であってもリーダー職に就けるよう制度を見直しました。年齢やジェンダーに関わらず、公平に人財を育成・登用・能力開発できる仕組み・環境を整備し、中長期的な成長に向けた基盤を、より強固なものとしていきます。

Question 05
「価値の保護」として取り組んでいるさまざまなリスク低減策のうち特に注力したことを教えてください。

環境課題解決への貢献を加速すべく中長期環境ビジョンの目標を見直しました。

気候変動をはじめとするさまざまな環境問題が深刻化し、企業にもその対応がより一層求められています。「地球環境の保護」は、全人類にとって喫緊の課題であるとともに、当社にとっても、対応が遅れれば長期的な成長を阻害する因子ともなりえます。
当社は2019 年度に策定した中長期環境ビジョン「ECO VISION 2050」のもと、「脱炭素社会の実現」「水循環社会の実現」「資源循環社会の実現」の3テーマで目標を設定し、取り組みを進めてきました。2022 年度には、さらに取り組みを強化・加速すべく、これらの目標を見直しました。自社の温室効果ガス排出量をゼロにする時期を2050 年度から2035 年度に前倒しにするとともに、2025 年度までにカーボンニュートラルを達成することや、2030 年度までに当社製品の個装箱に使用する紙をすべて環境配慮素材とすることなどを目標として再設定しました。当社の使命は、新薬の創製を通して患者さんやそのご家族に貢献していくことですが、「ECO VISION 2050」で掲げている環境課題の解決も、それと並ぶ重要なテーマであると考えています。新たな目標を達成し、これらの社会全体・人類全体の課題解決に貢献していくために、取り組みを加速していきます。また、「法令遵守とコンプライアンスの徹底」については、企業活動をするうえで大前提となるものであり、事業のグローバル化に伴ってその必要性がさらに高まっていると認識しています。従来「小野薬品行動規範」に則った企業行動を実践してきましたが、さらに関連会社やグローバル子会社も含めて、全社でより徹底していくために、2022 年度に「ONOグループ コード・オブ・コンダクト」を新たに制定しました。グローバル視点で新たな価値観も加えて見直しを行い、生命関連企業に求められる高い倫理観に基づいた誠実な行動をとるための拠り所として、各グループ会社の企業理念に次ぐものと位置付けています。
同時に、コンプライアンス・マネージャーを職場ごとに任命し、職場懇談会を定期的に開催することで、コンプライアンス違反が懸念される行為に対しても声を上げやすい体制を構築しました。
また、過去の重大なコンプライアンス違反を題材とした研修を継続しています。寄附のあり方についても見直し、奨学寄附金および寄附講座への寄附を中止しました。その他の寄附金についてもWebでの公募制とし、現地の社員が直接寄附の依頼を受けたり、関与したりしない体制とするなど、不適切な行為の未然防止に努めています。

Question 06
ステークホルダーの皆様へのメッセージをお願いします。

持続的成長に向けて挑戦を続けていきます。

当社グループを取り巻く環境は楽観視できるものばかりではありません。しかし、そうしたなかにあっても、私は成長戦略の遂行に向けて挑戦し続け、小野薬品を「あらゆるステークホルダーにとって魅力的な存在」として育んでいきたいと考えています。
そして、「私も小野薬品で働きたい」と思う人が一人また一人と増え、新たな価値創造へとつながっていく――。そんな未来を目指しています。
今後も持続的な成長に向け、社員一丸となって取り組んでいきます。