米国食品医薬品局がDeciphera社の腱滑膜巨細胞腫(TGCT)治療薬 ROMVIMZA™(vimseltinib)を承認
小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:滝野 十一、以下「当社」)は、米国時間2025年2月14日に米国食品医薬品局(FDA)がキナーゼ阻害剤であるROMVIMZATM(一般名:vimseltinib)を外科的切除により機能制限の悪化または重篤な病状が生じる可能性のある腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の成人患者の治療薬として承認したことをお知らせします。今回の承認は、当社の完全子会社であるDeciphera Pharmaceuticals, Inc.(米国マサチューセッツ州、以下「Deciphera社」)が研究、開発したROMVIMZAが、プラセボと比較して主要評価項目である客観的奏効率(ORR)の統計学的に有意な改善を達成し、生活の質に関する評価項目を含む、すべての副次評価項目において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善と忍容性の高い安全性プロファイルを示した第Ⅲ相MOTION試験の結果に基づいています。なお、ROMVIMZAは、FDAからファストトラック指定および優先審査の対象に指定されていました。
Leiden University Medical CenterのDepartment of Medical Oncologyの学部長であるHans Gelderblom, M.D., Ph.D.は次のように述べています。「ROMVIMZAの承認により、TGCT患者さんに忍容性が高く、有効性を示す新たな治療選択肢を提供できることになりました。TGCTは激しい痛み、可動域の制限、強張りを引き起こし、患者さんの生活に悪影響を及ぼします。第Ⅲ相MOTION試験ではROMVIMZAが腫瘍を縮小するだけでなく、他の承認済みのTGCT治療薬で見られるような肝障害が認められることなく生活の質に関する重要な測定項目を有意に改善し、かつ忍容性の高い安全性プロファイルを示した初めての薬剤であることが確認されました。この新たな治療薬は、TGCTにおける治療の重大なアンメットニーズに応えるものとなり得ます。」
Deciphera社の社長である宇田川 良太は次のように述べています。「ROMVIMZAがTGCT治療薬としてFDAに承認されたことはTGCTの治療における大きな前進です。私たちはROMVIMZAが外科的切除により機能制限の悪化や重篤な病状が生じる可能性のあるTGCT患者さんの新たな標準治療薬になり得ると考えています。ROMVIMZAはDeciphera社独自のスイッチコントロールキナーゼ阻害剤プラットフォームを用いて創薬された治療薬で2つ目に承認されたものとなり、今回の承認は当社の成長にとって重要なマイルストーンになります。ROMVIMZAの臨床試験にご協力いただいた患者さん、ご家族、介護者、そして医療従事者の方々に感謝いたします。」
当社の代表取締役社長である滝野 十一は次のように述べています。「このたび、ROMVIMZAがFDAに承認されたことを大変嬉しく思います。これにより、私たちのめざすグローバルスペシャリティファーマとしての目標の実現にまた一歩近づくことができました。ROMVIMZAの承認は、TGCT患者さんへの新たな治療選択肢の提供を可能にするものであり、当社の企業理念を具現化するものです。今後も、革新的な医薬品の開発と提供に努め、世界中の患者さんに貢献してまいります。」
TGCTは、関節の内側または近位に発生する希な非悪性腫瘍です。TGCTはコロニー刺激因子1(CSF1)遺伝子の調節異常によって引き起こされ、CSF1の過剰産生につながります。治療を行わなかった場合、または腫瘍が何度も再発すると、影響を受けた関節および周囲の組織に損傷と変性が生じ、重大な障害を引き起こすことがあります。
抗CSF1/CSF1受容体(CSF1R)療法による治療歴がなく(イマチニブまたはニロチニブによる治療は許容)、手術不適応のTGCT患者を対象にROMVIMZAの有効性および安全性をプラセボと比較評価する無作為化二重盲検プラセボ対照の第Ⅲ相MOTION試験において、ROMVIMZAは、プラセボと比較して、intent-to-treat(ITT)集団における固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1)を用いた盲検独立放射線評価委員会(BIRR)の評価による25週時のORRで、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました(ROMVIMZA群40% vs プラセボ群0%、p<0.0001)。主要評価項目の結果は、プラセボ群と比較してvimseltinib群において25週時で観察された可動域、患者報告による身体機能および疼痛について統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した結果に支持されています。ROMVIMZAの安全性プロファイルは管理可能であり、第Ⅰ/Ⅱ相試験でこれまでに報告されたものと一貫していました。
Deciphera社はROMVIMZAを米国で今週に発売開始する予定です。 詳細は www.ROMVIMZA.com をご参照ください。
なお、同社は、2024年7月に、ROMVIMZAのTGCT治療薬としての医薬品販売承認申請(MAA)が欧州医薬品庁(EMA)により受理され、現在審査中であることを発表しています。
Deciphera社は、米国におけるTGCT患者および医療従事者がROMVIMZAにアクセスしやすい環境を整えるための支援に尽力しています。その取り組みの一環として、同剤への包括的なアクセスと治療対象患者への経済的な支援プログラムを提供する患者支援プログラムDeciphera AccessPointTM DecipheraAccessPoint.comを利用できるようにしています。
MOTION試験について
MOTION試験は、抗CSF1/CSF1R療法による治療歴がなく(イマチニブまたはニロチニブによる治療は許容)、手術不適応のTGCT患者を対象にvimseltinibの有効性および安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験です。本試験の主要評価項目は、intent-to-treat(ITT)集団における固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST v1.1)を用いた盲検独立放射線評価委員会(BIRR)の評価による25週時の客観的奏効率(ORR)です。副次評価項目は、いずれも25週時に評価した腫瘍体積スコア(TVS)によるORR、関節可動域(ROM)、身体機能、強張り、生活の質および疼痛です。
本試験は2つのPartで構成されています。Part 1では、患者はvimseltinibまたはプラセボのいずれかに割付けられ、24週間投与を受けます。Part 2では、Part 1でプラセボに割付けられた患者はvimseltinibの投与を受けるオプションがあり、すべての患者が非盲検下でvimseltinibの長期投与を受けます。
ROMVIMZA(vimseltinib)の適応症および安全性情報について
米国におけるROMVIMZAの適応症および安全性情報については、Prescribing Information.をご参照ください。
腱滑膜巨細胞腫(TGCT)について
TGCTは、コロニー刺激因子1(CSF1)遺伝子の転座によって、CSF1の過剰発現とCSF1R陽性炎症細胞の病変への集積により引き起こされる希な疾患で、関節の内側または近位に発生する希な非悪性腫瘍です。TGCTは悪性ではありませんが、増殖して周囲の組織や構造に損傷を与え、関節の痛み、腫れ、身体機能の低下、可動域の制限などを引き起こすことがあります。標準治療は手術による腫瘍切除ですが、特にびまん型のTGCTではこれらの腫瘍が再発する傾向があります。治療を行わなかった場合、または腫瘍が継続的に再発すると、影響を受けた関節および周囲の組織に損傷と変性が生じ、重大な障害を引き起こすことがあります。一部の患者では、外科的切除は機能制限の悪化または重篤な病状を引き起こす可能性があり、また、全身治療の選択肢は限られており、TGCTに対する新たな治療選択肢が必要とされています。
Deciphera Pharmaceuticals Inc.について
(2024年6月11日に、Deciphera社は小野薬品工業株式会社の完全子会社となりました。)
Deciphera社は、がん患者さんの生活を改善するための新薬の開発、商業化に注力しています。Deciphera社独自のスイッチコントロールキナーゼ阻害剤プラットフォームとキナーゼ生物学の専門知識を活用して、革新的な医薬品の幅広いポートフォリオを開発しています。
Deciphera社は臨床試験段階のプラットフォームから複数の製品候補の開発を進めており、その中でスイッチコントロール阻害薬であるQINLOCK®は消化管間質腫瘍(GIST)の四次治療薬として、米国、欧州連合および複数の国々で承認されています。ROMVIMZA(vimseltinib)は、外科的切除により機能制限の悪化または重篤な病状を引き起こす可能性があるTGCTの成人患者に対する治療薬として米国で承認されたキナーゼ阻害剤です。
詳細についてはwww.deciphera.com をご覧いただくか、LinkedIn および X (@Deciphera)でフォローしてください。
将来の見通しに関する記述についての注意事項
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